CRAFTING STORY
ものづくりストーリー
EZコントロール搭載航空機給油車
矢野特殊自動車は「EZコントロール搭載航空機給油車」を開発しました。
その経緯と、フランスのタイタン アビエーション社(TITAN AVIATION)との技術提携の舞台裏について、矢野俊宏専務取締役兼タンク特装事業部事業部長と、タンク特装車事業部技術部航空ローリ課の山下洋平係長が語ってくれました。
タイタン社との出会い
「EZコントロール(デジタル管理システム)」を搭載した航空機給油車を開発するきっかけは、フランスのタイタン社との出会いにありました。
タイタン社は、ヨーロッパでは"3本の指"に入る、航空機給油車を専門に製造する会社です。そんな会社が給油モジュールの販売パートナーを探している中で、矢野特殊自動車に声がかかったのが両社の出会いでした。
2017年に海外の給油車展示会へ矢野社長らが出向いた際、タイタン社のフランス工場も見学しています。そこに、開発中だった「EZコントロール車」があったのです。
日本の給油車を革新するシステム
日本では給油作業の計器やマニュアルなど、ほとんどがアナログです。「給油業務は圧力をコントロールしないといけない。着陸して離陸するまでの短時間に、速くたくさんの燃料を注入しなければならないが、圧力をかけすぎると航空機が壊れてしまう」と矢野専務は話します。
航空機の給油作業は50psi(1平方インチの面積にかかる力)以下の圧力で、決められた手順通りに安全かつ手際よく給油することが求められます。雨の日、風の日、夜間も、作業者が目視で対応しています。そこにはヒューマンエラーの危険がつきまとうため、作業員の育成には1年程度かかると言われています。
それを軽減するのが、タイタン社の開発した「EZコントロール」システムです。世界的に見ても、デジタル管理システムの給油車はまだほとんど出回っていません。「ヒューマンエラーを機械で防ぐことが、EZコントロールにはできる」と山下係長は言います。
万一作業手順を間違えてもセンサーでロックがかかり、間違いが起こらない仕組みになっています。デジタルの画面一つでトラブルにも対応でき、人手不足が続く給油業界にとっても、作業者の育成期間を短縮できるメリットがあります。
矢野専務も「革命と言っていいと思います」と期待を寄せます。日本の給油車市場においても、このシステムを導入することで差別化が図れると考えています。
2018年6月からシステムの日本導入の可能性について検討を開始し、「日本市場でもやりましょう」と方向性が定まったのち、2019年7月から開発に向けて本格始動しました。
コロナ禍で長引く開発
開発には困難がつきまとい、2021年3月の完成予定が2023年5月までずれ込みました。まず、コロナ禍と戦いながらの開発に苦戦しました。矢野特殊自動車がタンクをつくり、タイタン社製の機械室モジュールと日本のシャーシの3つを合体させるのですが、機械室モジュールの入荷が大幅に遅れました。
システムの立ち上げでも、タイタンの技術者の来日スケジュールが大幅に遅れました。コロナ禍もあってフランスへ出向くことは一度もなく、モジュールの仕様やシステムの打ち合わせはWEB会議のみで80回以上となり、どうしても時間がかかりました。
欧州との違いに難航する開発
さらに、ヨーロッパと日本の給油車における構造や作り方の違いにも苦労しました。海外ではネジやボルトにインチネジを使用しますが、日本の規格ではないためJIS規格のネジに変える必要がありました。流量計の制御の仕方も、日本式とヨーロッパ式とでは異なります。
矢野専務は「思想が違ってもめたこともありました。最後は"矢野の責任でやる"と押し切らせてもらいました。引けない部分は引けない。」と語ります。お互いの意志をぶつけ合いながら、ついに完成にたどり着いたのです。余談ですが、1ヵ月連絡が止まるフランス独特の8月のバケーションには、当初困惑したこともあったそうです。
2023年5月ついに第1号車が完成!
「実際に給油会社さんに使っていただいて、空港に配備されることがゴールだと思います」と山下係長は話します。システムの言語もフランス語・ドイツ語・英語・スペイン語だけだったところから、何度もやりとりを重ねて日本語版も完成しました。
1台目が完成したばかりですが、その先の広がりについて「スマホと一緒。使って慣れてしまえば戻れないです」と山下係長は予測します。
タイタン社への出資
2023年10月、タッグを組んできたタイタン社が新型コロナの影響で倒産しました。航空業界向け車輛の専業会社であったため、コロナのダメージに耐えられなかったのです。矢野特殊自動車は、タイタン社が持つ電動化とデジタル化の技術が日本の給油車市場にとっても今後大いに役立つとの判断から、フランスの高所作業車メーカーであるKLUBBとともに共同出資し、タイタンエアロ社として再出発することになりました。
KLUBBを含めた新たな国際アライアンスのシナジーにより、給油車・特装車の新たな事業展開が生まれることも期待されています。
給油車のスタンダードを目指して
矢野専務は「世界トップレベルの技術と一緒にやっていく機会を継続したかった」とその狙いを語ります。給油車としてまず日本で一番になることが目標です。
矢野特殊自動車のスピリットは"技術で人を助ける"こと。「空港の給油作業の業務をデジタル化して、給油作業を楽に安全にしていきたい。そして、これがスタンダードになるように」と、矢野専務は使命感を込めて話してくれました。

